ノルウェーの最北の街の内の一つアルタ。世界遺産の「アルタの岩絵」を始め、1899年に世界最古のオーロラ観測所が設けられたことで有名です。もちろん今でもアルタはオーロラ観察のメッカで、冬はオーロラ観察目的で多くの観光客が訪れます。そしてアルタはフィンマルクエリアの中でも大きな街で、人口も他のフィンマルク内の街よりも多い中心的な役割ももっています。
今回は世界遺産にも登録されている「アルタの岩絵」があるアルタ博物館(Alta museum)を訪れましたので、実際の写真と解説を交えて紹介します。
アルタの位置
上のマップ上、オレンジのピンがアルタです。
比較として、ブルーのピンを打ってみました。ブルーのピンは北欧4国各国の首都の空港です。
グリーンのピンはトロムソ空港(TOS)です。ホニングスボーグを含むフィンマルクエリアの玄関口になります。なお、トロムソ自体はフィンマルクではなくTromsエリアになります。
アルタへのアクセスについて以下にまとめていますのでどうぞご覧ください
アルタのホテル・観光・スーパー・レストランについては以下に詳しくまとめていますのでぜひご覧ください。
アルタ博物館へのアクセス
アルタ博物館はアルタの街中心からは少し離れたところにあります。街中心のバスターミナルからは公共バス140番で約10分程度の距離です。
Snelandia社の公共バス140番を街中心から乗ります。アルタのバスも旅行者に親切で、次や次の次のバス停まで表示されますので降り間違いはないと思います。
なお、運賃は1回毎に51NOK(約700円)を乗車時にクレジットカードで支払います。運賃が高いのが悩ましいところです。
アルタ博物館のバス停です。丘を下ったところに博物館がありますが、その前にしておくことがあります。
そうです。帰りのバスの時間をチェックしておくことです。昼間1時間2本ですので時間を有効に使うためにはこの作業が不可欠です。なお街中心から来たバスはこのバス停でまた街中心に引き返します。
なお、この日はバス停から「Halo」がかかっている太陽を見ました。オーロラ観察目的の時は出来ればあまり見たくない昼間の現象です。
「Halo」=天気の下り坂のサイン。そしてこの日の夜空は雲で充満、大雪でした。
*空高い場所の薄雲の中の氷の粒に太陽の光が屈折して起こる現象。低気圧や前線の接近の前触れです。
アルタ博物館「Alta museum」
アルタ博物館にやってきました。「アルタの岩絵」は1985年にユネスコ世界遺産に登録され、1993年にノルウェーの博物館としては初めて「European Museum of the year」というヨーロッパで最高の博物館賞を獲得しているようです。季節によってopen時間が異なりますが通年営業です。Google Mapで営業時間については行く前にチェックしておきましょう。特に冬はcloseが早い(15時~16時)ので注意しましょう。
では中に入ってみましょう。
-20℃の極寒の外とは違って施設内は暖かく調節されています。入口入ってすぐあるカウンターで入場料を支払います。もちろんクレジットカードに対応しています。
入場料等の情報は以下の通りです。
冬期(1月2日~4月30日、10月1日~12月30日):大人1人75NOK、その他料金設定あり
夏期(5月1日~9月30日):大人1人115NOK、その他料金設定あり
チケット購入時にカウンターのスタッフから内部の説明があります。1階と地下1階に展示スペースがあるということです。
カウンターの横にはゆっくりできるカフェテリアも併設されています。
受付カウンターとカフェテリアの間の廊下を抜けて外に出るとそこが、ユネスコ世界遺産登録されちる岩絵がそこら中の岩に描かれている遊歩道(1周約3㎞、傾斜のキツイ部分もあり)になります。非常に残念なのですが、10月~4月の間は岩絵が雪に覆われてしまうため、博物館内の岩絵を鑑賞することになります。
The Pippi Stone
1950年に発見された岩絵が描かれた石です。この石の彫刻模様はアルタでその時初めて発見されて以来、その後20年間は他に同様の模様を見ることはなかったとのことです。この石はアルタフィヨルドにあるジャガイモ畑で発見され、彫刻自体は3000~4500年前に掘られたものであると考えられています。長くつ下のピッピのヒロイン、ピッピにちなんで名付けられました。
1900年代前半に写真の石器がアルタの近くで発見され、それぞれ紀元前9500年~紀元前1800年にかけてのものと考えられています。
Rock art
一番上の段がPhase1と言われ、7000~6000年前の段階、2段目がPhase2で6000年~5000年前の段階、3段目がPhase3で5000年~4000年前の段階、4段目がPhase4で4000年~3000年前の段階、5段目がPhase5で3000年~2000年前の段階とされています。どのような岩絵が各年代で主だったのかをみるのは非常に興味深いです。
現在約70個のサーミドラム(サーミの人々が使用する太鼓)が現存しているとされ、ヴァッツェはフィンマルクエリアで現在まで残った唯一のサーミドラムと考えられています。オリジナルはコペンハーゲンの国立博物館にあり、アルタ博物館にはレプリカがあります。ヴァッツェドラムは他のサーミドラムにはない特徴があり、キリスト教以前のサーミとその後のサーミのミックスを示しています。5つのセクション(横一列)に分かれ、世界や地下、天国などを意味しています。
- セクション1は風の神様、雷の神様、そして使いのトナカイ
- セクション2は衣をまとった子供、大地の神様、大聖堂、世界を統治する女神
- セクション3は神の誕生、聖母マリア、3人の人
- セクション4は月、礼拝をする人、教会
- セクション5は地下を統治する人、邪悪な心、火、墓
ということです。
Shaman’s magic drum
キリスト教がサーミ地域にやってくる前のサーミドラムのシンボルについて説明があります。その中から個人的に興味深かったものピックアップして以下に挙げていきます。
サーミの人々の信仰は元来、森羅万象に宿る様々な精霊を対象とした精霊信仰でした。季節・健康・繁栄・災害・自然の恩恵などすべてのものが精霊の力によるものという信仰です。精霊の声を聞く人をノアイデという祈祷師(シャーマン)といい、シャーマン・ドラムを鳴らしながらトランス状態に入り問題となっている精霊の特定・解決方法を知るという役割があったようです。
Beaivi
神についてのサーミの神話において最も強い力があると考えられているのが「太陽」です。そこではトナカイは太陽光線に乗って地球に来たと考えられ、サーミドラムにおいても多くの重要な神が太陽光線の上に描かれています。美しい物のシンボルとしてまた神聖な物として円形が考えられていたことがサーミの太陽に対する信仰の素にあると考えられています。
Saivu
サーミの楽園を意味します。この楽園においては現実世界で亡くなった後の人も亡くなる前と同じように過ごします。そしてそれはトナカイや他の野生動物とともに幸福のみが存在する概念です。この楽園に住む人々は神聖な山と湖に住むと考えられ、泉がしばしば湖の底から湧き上がります。
Saivu-loddi, -guolli and sarvvat
神からの助言や導きを求めて死の世界または地球上のどんな場所に行く際に、鳥、魚、雄トナカイはサーミ・シャーマン(神と対話する人間)のアシスタントとして利用されていました。
The Bossekop Marketの様子の展示
1906年の12月に撮影された写真が展示されてあります。3月の春のマーケット以来、マーケットブースはクローズになっており、12月開かれるのをアルタの人々はみな12月のこの開催を心待ちにしていたようです。特に金曜市は商品を販売・買い取る人々皆、サーミの人々がトナカイソリの隊列で到着するのを待っていました。毛皮、トナカイの肉を買いに来た人でごったがえしていたようです。
地下の展示
私が訪れたときはサーミの衣服について、特に編み物についての特集でした。
特に手袋の展示でしたが、トナカイの皮で作成した靴やその他の装飾品の展示がありました。サーミの赤・青・アースカラーの色合わせはほんとオシャレです。
ニットグローブ(ミトン)もオシャレに展示されていました。
最後に
いかがでしたか?ユネスコ世界遺産登録されている「アルタの岩絵」を有するアルタ博物館。冬は残念ながら雪に覆われてメインの岩絵を見ることができませんが、博物館内部の展示も楽しめる内容になっています。岩絵がある遊歩道は約3㎞あり、さらに傾斜もキツイところがあります。おススメはじっくり夏期に外の岩絵を堪能することですが、もしオーロラ観光でアルタを訪れた際には冬のアルタ博物館にも行ってみてくださいね。
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