海外旅行に行く前にみんなが一度は気にする「機内持ち込みバッグ」。一般的な観光名所を巡る旅で、街中のホテルに荷物を置いておける場合はそんなに迷うことはありません。そのような場合、多くの人がスーツケースをチェックインカウンターに預けて、必要最低限のものや貴重品を小さなカバンに入れてセキュリティチェックを受けたあと、飛行機に搭乗していると思います。
ところが、オーロラ撮影旅行となれば事情が違ってきます。まず、ダウンなどの嵩張るアウターを着用していること、多様なアウトドアギア、カメラや三脚の存在があること、現地ではカメラと三脚と最低限の物品を持ち運べるバッグ(バックパックが理想)が必要であることが挙げられます。
そこで今回は、筆者のパターンを考察してレポートします。
オーロラ撮影旅行の時の服装・持ち物について以下にまとめていますので是非ご覧ください。
まず言葉を覚えておこう!
海外の空港で使うかもしれない・もしくはよく出会う言葉ですので覚えておいて損はありません。
機内持ち込み = carry-on
「機内持ち込み荷物」= carry-on luggage
機内預け入れ = check-in
「機内預け入れ荷物」= check-in luggage, checked luggage, checked baggage
旅スタイルその①:スーツケース(預け入れ)+小~中型バッグ(機内持ち込み)
着替えやお土産などをたくさん入れることができる大型スーツケースを空港のチェックインカウンターで預け入れて、貴重品などを小さなバッグ(リュックや手提げカバン)にいれて機内持ち込みにするという、一般的に良くみる海外旅行のスタイル。
オーロラ撮影旅行でも通常観光目的の海外旅行と同じようにこのスタイルで可能ではあります。機内に持ち込めるサイズのリュックの選び方のポイントとしては、現地でカメラや三脚などの必要物品の収納に便利なものを選ぶということになると思います。機内持ちこみのできる範囲(40リットル程度)で各ブランドから選べば間違いないでしょう。
問題は、「現地での移動」です。
秋であれば街中に雪が積もっていないためスーツケースの車輪を転がして歩くことは可能ですが、冬~春にかけてはオーロラを観察できる街ならば大体が路面に雪が積もっています。
例えばキルナの街中の車道は上の写真のように雪を固めてありますが、ホテル前の歩道部分や車道の脇道は雪が積もっている状態です。スーツケースの車輪がうまく回転せずに結局ラッセルして進むことになる旅行者を多く見かけます。
キルナ街中にある教会です。ここも冬はザクザクと雪が積もった道路を歩いていくことになります。メインの国道からはずれるとキルナのような街でもこのような足元になります。
ですのでオーロラ撮影旅行でスーツケースでの移動は時に苦労することがあることに注意です。
旅スタイルその②:機内持ち込みが可能なバッグのみ
必要最低限のものを厳選して、貴重品とともに機内持ち込みができる範囲内のサイズのバッグのみで旅をするという、ミニマリストといわれるスタイル。
オーロラ撮影旅行ではカメラ、三脚、防寒対策の物品が必須ですので、それらのサイズを極力小さくできるならばこのスタイルは可能ですが、持ち込み可能サイズのみのオーロラ撮影旅行は現実的には結構難しいです。
機内持ち込みバッグのみでオーロラ撮影旅行なら、その中身は?
・カメラ:2台までは可能とおもいますが、あとは重さとスペースの問題です。一眼ならば1台が限界なことが多いです。
・三脚:通常三脚ではなく、コンパクト軽量のトラベル三脚かゴリラポッドのようなミニ三脚で、バッグの中に収納が可能なものが条件になります。
・バッテリー:激寒のなかでは各種バッテリーがすぐなくなりますので予備バッテリーが複数必要です。
・防寒グッズ各種:これも必須物品です。
上記を40リットルのバックパックに入れ込むことができるならば機内持ち込みバッグのみでのオーロラ撮影旅行が可能になります。現実的にはかなり厳しいと言わざるを得ません。
また小型スーツケース+小型バッグでどちらも機内に持ち込みにして渡航することもできますが、その際の小型バッグは貴重品を入れる程度のバッグという扱いにすることが条件になります。
そもそも機内持ち込みのバッグのみで旅行するメリットは?
機内持ち込みサイズのバッグのみでの旅行は持ち運ぶモノが制限されますが、逆にメリットもあります。そのメリットは以下のようになり、主に機動性が良くなります。
・手荷物を預けず、すべての荷物を機内に持ち込むと、チェックインカウンターで荷物を預ける時間と、到着地で荷物を受け取る時間の節約が可能です。
・到着地でターンテーブルで荷物が運ばればれてくるのを待つ必要がありません。空港に到着して、すぐに次の場所へ移動することができます。
・荷物の破損や紛失(ロストバゲージ)を心配する必要がありません。
機内持ち込みバッグには重さ・サイズの制限があることに注意!
「機内持ち込みバッグには重さ・サイズの制限がある」ということに注意が必要です。もちろん機内預け入れ荷物にも重さ・サイズが超過すれば別途追加料金が発生することも覚えておく必要があります。
例えばJAL・ANAは国際線の機内持ち込み荷物のサイズ制限は同じで、以下のような規定があります。
・W55cm×H40cm×D25cm以内
・3辺の和が115cm以内
・重さが10kg以内
機内に持ち込める手荷物の個数は1個までですが、手荷物以外にノートパソコンなどの身の回り品を1つ持ち込むことができます。
例)ルフトハンザ航空 (エコノミーなら1個、ビジネスより上は2個)
・サイズが55×40×23 cm以内
・重さが8 kg以内
例)タイ航空 (カメラやパソコンを入れるハンドバッグや鞄などを1個と、下の範囲内の手荷物1個)
・サイズが56×45×25 cm以内
・重さが7 kg以内
LCCはその値段とトレードオフの関係で機内持ち込みの手荷物サイズチェックが厳しいことと、サイズがレガシーキャリアよりも一回り小さいなど注意が必要なことが多く、いずれにせよ利用前に各航空会社のウェブサイトで確認しておくことが必要です。
スタイル①でも②でも機内に持ち込むバッグはどんなものが良い?
まず、無雪期の海外トレッキングに使用できるような小型~中型バックパックが良い適応です。
海外トレッキングに使える機内持ち込みを視野にいれた小型~中型バックパック
各ブランドの35リットルまでなら(甘ければ40リットルまでなら)大体機内持ち込みが可能なサイズに収まることが多いです。30リットル以下で問題になることはまずないと思います。ヒップベルトの大きくガッチリしているバックパックはチェックインカウンターやゲートでスタッフに目を付けられる可能性があります。
下に挙げるバックパックの中でも36~40リットルのものは、ギリギリか少しサイズオーバーの可能性もあるので、搭乗ゲートでチェックが入りそうな場合は天蓋をぺちゃんこにしてサイズを小さくさせる等の工夫が必要になる可能性があることに注意してください。
トレッキングにも使用しかつ機内持ち込みにしているバックパックでヨーロッパ内の空港で見かけるバックパックと言えば、オスプレイのケストレル(38、男性用)、カイト(36、女性用)、タロン(36、男性用)、テンペスト(34、女性用)、ストラトス(36・34、男性用)、シラス(36、34、女性用)です。とくにヨーロッパアルプスの国々の空港ではDeuter(ドイター)のフューチュラPro(40・36・32 男性用、38SL・34SL・30SL 女性用)を頻繁に見かけます。その次にグレゴリーのズールやジェイド、アークテリクスのブライズと続く印象です。
・Osprey (オスプレー) ケストレル 38 (男性用)
・Osprey (オスプレー) カイト 36 (女性用)
・Osprey (オスプレー) タロン 36 (男性用)
・Osprey (オスプレー) テンペスト 34 (女性用)
・Osprey (オスプレー) ストラトス 36・34 (男性用)
・Osprey (オスプレー) シラス 36・34 (女性用)
・Deuter(ドイター) フューチュラPro(40・36・32 男性用)
・Deuter(ドイター) フューチュラPro(38SL・34SL・30SL 女性用)
・Gregory(グレゴリー) ズール35・30 (男性用)
・Gregory(グレゴリー) ジェイド 33・28 (女性用)
トレッキング仕様ではないが、40Lのトラベルバックパックもおススメ
・Osprey(オスプレイ):ファーポイント40リットル
バックパッカーご用達のファーポイント70の小型版40リットルのバックパックです。これなら機内持ち込みで制限を超えることがありません。筆者もパンパンに詰めて持ち運んだことがありますが、特にカウンターやゲートでひかかったことがありません。
・Gregory(グレゴリー):コンパス40
ヨーロッパ内ではあまりグレゴリーをみませんが、スタイルもよい機能的な40リットルのバックパックです。
・Arcteryx(アークテリクス):コバート ケース C/O
これもまたスタイルの良い機能的な40リットルのバックパックです。
・Peak Design(ピークデザイン):トラベルバックパック45L
最近人気のピークデザインのCarry-onバッグです。機能的でかつスタイリッシュですが、他のバッグより重めです。
旅スタイルその③:大きなバックパック(預け入れ)+小さなバッグ(機内持ち込み)
大きなバックパックに着替えやお土産などをたくさん入れて空港のチェックインカウンターで預け入れて、貴重品などを小さなバッグ(リュック)にいれて機内持ち込みにするという、バックパッカーの代表的なスタイル。効率を考えるとこのような両面バックパックの状態に行きつきます。
その①で示したように、オーロラを観察できる街の冬~春は路面凍結・積雪ですので、バックパックを背負って歩く方がスーツケースをラッセルしながら歩くよりはるかに楽です。
⇒筆者は飛行機での移動において以下の方法をとります。
65~75リットルの大型バックパックの中に、折りたためるバッグ(リュック型or手提げ型)をいれておく。チェックインカウンターに並ぶ前に大型バックパックからカメラ2台(もしくは3台)とバッテリー類、貴重品を折りたためるバッグに入れ替える。
チェックインカウンターでは大型バックパックを預け入れます。筆者はカバー等せずにバックパックをそのまま預け入れしています。トレッキング用のバックパックはセキュリティーの面では弱いですが、高価なものが入ってなさそうなバックパックを狙って開ける物好きもいないようです。とはいってもある程度の覚悟は必要です。
上の写真はアイスランド・レイキャビクのケプラビーク空港で筆者が大型バックパック(Aircontact pro 75+10)を預け入れした光景です。預け入れ後にストラップ類の巻き込みトラブル等が無いようにバックルをはめた状態でいつも預け入れしています。
具体的にどんな大型バックパック?
夏場のトレッキングで使用している65~75リットルの大型バックパックをここで使用してもよいですし、オーロラ撮影旅行ではトレッキングをすることが無いということならば、もう少し選択肢が増えてきます。
夏のトレッキングでも使用できる大型バックパック
Deuterのエアコンタクトプロについては、現在入手できるモデルはエアコンタクトコアになります。メーカー側からも25㎏に対応するフラッグシップとして販売されています。男性用の最大サイズが70+10、女性用の最大サイズが65+10 SLになります。その一回り小さい男性用の60+10や女性用の55+10 SLもバランスの良いモデルです。
・Deuter (ドイター) エアコンタクト コア 70+10
・Deuter (ドイター) エアコンタクト コア 65+10 SL
ヨーロッパアルプスでのトレッキングにおいて一番よく見かけるのは断然Deuter(ドイター)のバックパックです。スリムな形で非常に恰好のよいバックパックで、ヨーロッパアルプスの雰囲気に合っています。その次に多いのがオスプレーのバックパックです。さらにその次にアークテリクスが続く印象です。また、フランス国内ならミレー、スイス国内でマムートをよく見かけます。国際線の飛行機でバックパックをチェックインさせてやってくる登山者には昨今流行りのULバックパックをほとんど見かけません。どうしてもULバックパックを使用したい場合、チェックイン後の中身の保全・セキュリティーについては自己責任ですが可能ではあると思います。筆者としては海外トレッキングに行く場合、国際線での乗り継ぎがある時は特に、従来型のここに挙げているような比較的頑丈なバックパックが無難でお勧めです。
・Gregory (グレゴリー) Baltoro バルトロ 65 (男性用)
・Gregory (グレゴリー) Baltoro バルトロ 75 (男性用)
・Gregory (グレゴリー) Diva 60 (女性用)
・Gregory (グレゴリー) Diva 70 (女性用)
・Osprey (オスプレー) イーサープラス60 (男性用)
・Osprey (オスプレー) イーサープラス70 (男性用)
・Osprey (オスプレー) エーリエルプラス60 (女性用)
・Osprey (オスプレー) エーリエルプラス70 (女性用)
・Osprey (オスプレー) イーサープロ70 (男性用)
・Osprey (オスプレー) エーリエルプロ65 (女性用)
・Osprey (オスプレー) イーサー65 (男性用)
・Osprey (オスプレー) エーリエル65 (女性用)
・Osprey (オスプレー) アトモスAG65 (男性用)
・Osprey (オスプレー) オーラAG65 (女性用)
・Arcteryx (アークテリクス) Bora (ボラ) 75・70・65・60
トレッキングには使用しないならばこんな大型バックパックもある
以下のようなバックパックもヨーロッパの空港ではよく見ます。
・Osprey(オスプレイ):ファーポイント70
バックパッカーご用達のバックパックです。その理由は機内持ち込みできるバックパックが背中に張り付いていて、預け入れる際にそのバックパックを取り外すことができるからです。ヨーロッパ国内ではコレを背負って移動、もしくは小バックパックを前面に背負っているバックパッカーをよく見かけます。
大型バックパックの中に入れておく「折りたためるバッグ(リュック)」のチョイスは?
この折りたためるバッグがポイントです。条件としては以下
・カメラ2台とそれぞれのバッテリー類が入り、現地では防寒具を適宜収納できる
・機内に持ち込めるサイズである
・現地では折りたたんだ三脚を収納、もしくはサイドに取り付けることができる
・背負い心地は良いに越したことはないが、悪くても妥協できる
三脚が1個で、サイズがトラベル三脚レベルならば、以下のトラベルトートシリーズで十分こなせます。
この折りたためるバッグがポイントです。軽量・丈夫・筆者の場合カメラ2台とバッテリー類が入るとなれば必然的に20リットル以上は必要になってきます。機内持ち込み用に特化するため、バッグの背負い心地などは特に気にする必要がありません。
パタゴニア ウルトラライト・ブラック・ホール・トート・パック 27L
パタゴニア公式サイト ウルトラライト・ブラック・ホール・トート・パック 27L
このパタゴニアのトラベルトートシリーズが、軽さ・容量・丈夫さ・便利さでは最強で、群を抜いています。ポケットの数や場所もよく考えて作られており、非常に使い勝手のよいバッグです。アタックザックとしても使えます。他にもいろいろあるといえばありますが、このバッグを凌駕するものがまだ無いように思えます。
このパタゴニアにトラベルトートシリーズが、軽さ・容量・丈夫さ・便利さでは最強で、群を抜いています。他にもいろいろあるといえばありますが、このバッグを凌駕するものがまだ無いように思えます。
トラベル三脚が2個もしくはしっかりした三脚(例えばGitzo3型以上)1個もしくは2個ならば、現地で三脚を片手で一個持つとしても、上のトラベルトートシリーズでは運搬が困難になってきます。
そのようなときの折りたためる(もしくは大きなバックパックに入れることができる)バックパックには筆者は
ULA(Ultralight Adventure Equipment(ULA))の「CDT」を使用しています。
こういった場面ではUL系のバックパックは非常に使用しやすいです。その理由として、背面板(CDTの場合は硬質スポンジ)を取り外せば、バッグ自体を丸めることや折りたたむことができることが挙げられます。さらにCDTの良い点としてはサイドポケットが通常のバックパックより大きく深いため、そこに左右に1つずつ三脚を突っ込んで入れることができます。実際Gitzo4型を運搬することも難なく可能です。
その他、各ブランドから背面板がないものもしくは背面板が取り外せる適度なサイズのバックパックが発売されています。
・Arcteryx(アークテリクス):アルファAR20・AR35など
・The North Face(ザ・ノースフェイス):グラムパックなど
・Granite gear(グラナイトギア):VIRGA26など
色合いやデザインが昔からいつも心に刺さる筆者のお気に入りのグラナイトギアも適度なサイズのバックパックがあります。
三脚はどうする?預け入れる?機内に持ち込む?
機内持ち込みにするならば三脚のフォールディングサイズが60㎝未満とまことしやかに言われていますが、これは各航空会社に確認が必要です。実際オーロラ撮影目的の旅行者が三脚単体を手に持って、あとの持ち込み手荷物としてリュックで機内に搭乗してくることはよくあります。筆者は預け入れる荷物がある場合は、その中に三脚を収納しておいて預け入れることにしています。
カメラをどう運ぶ?
バックパックに直接カメラを入れることはせずに、上の写真のようなトップローダータイプのカメラバッグにカメラを1個1個入れてバックパックに入れています。
例えば、OlympusのOMD EM-1 Mark2に12-100mm f4の組み合わせや、Canon 6D Mark2に16-35mm f4の組み合わせならば上の写真の「Toploader Zoom 50 AWⅡ」で余裕を持ってきっちり収納することができます。
ミラーレス一眼2台持ちならトップローディングバッグを2つ持っておいて損はありません。飛行機機内に持ち込む際や現地までの電車・街歩き移動の際、カメラ・レンズシステムをトップローディングバッグに入れておくことで機材保護になります。
最後に
オーロラ撮影旅行となれば、ダウンなどの嵩張るアウターを着用していること、多様なアウトドアギア、カメラや三脚の存在があること、現地ではカメラと三脚と最低限の物品を持ち運べるバッグ(バックパックが理想)が必要です。今回は、度重なる飛行機の搭乗で固定されてきた筆者のパターンを考察してレポートしました。皆さんはどのようなスタイルで渡航していますか?オーロラ撮影旅行に行かれる際の参考になれば幸いです。
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