スウェーデンでの研究生活に一区切りをつけ日本に帰国した筆者でしたが、帰国後は諸般の事情で北関東在住となりました。そのため東北エリアや上信越エリアへのアクセスが良く、近年無雪期は主に飯豊連峰・朝日連峰、厳冬期・残雪期は長野・群馬・福島・新潟・山形の山々に行き自然を楽しんでいます。
当サイトをご覧になっている多くの方と同じく、山に行くのは土日か祝祭日のみです。行先は各種天気予報次第ですが、運が悪ければ週末が1か月すべて雨や曇りという月もあり、その場合は残念ながら当分山には行けません。そして天気予報が外れることもあり、天候悪化のため途中撤退も時々あります。
そんな中、筆者好みの雪山の中で「初心者にもおすすめ」で「気軽に景色を楽しめ」て「日帰り」の雪山を今回紹介しようと思います。ロングトレイル好きな筆者の好みで選んでいますので、今回挙げたものは雪原歩きの割合が多く、岩稜帯がほとんどないコースです。そして個人的には厳冬期よりも天候が安定する残雪期の登山が好みです。他にも景色が楽しめる雪山がたくさんありますが、長距離・長時間・駐車スペース等他の条件等から「お気軽」な雪山登山とは言えない場所は今回挙げていません。それらについては別の機会に挙げていこうと思います。
何もかも全く初めての人 へのおススメ雪山
霧ヶ峰 (きりがみね)
最高峰は標高1925mの車山で、車山山頂には気象レーダー観測所があり、そこからの360度開けた素晴らしい展望が楽しめます。広大な草原・湿原が冬期は見渡す限りの広大な雪原になります。日本屈指の絶景道路であるビーナスラインの霧ヶ峰車山肩駐車場から車山山頂への往復だけでなく、蝶々深山等を巡る周回コースで駐車場まで戻ることもできます。コース上に急斜面はなく稜線もありませんがスノーシュー等の装備が望ましいです。コースが広く他の登山客とのすれ違いに気を使うこともないので、スノーシューの練習に適していると思います。八ヶ岳連峰、富士山、南アルプス、中央アルプス、北アルプス、上信越の山々、浅間山等が見渡せます。
筆者の「【雪山山行記】霧ヶ峰編」は以下をご覧ください。
美ヶ原 (うつくしがはら)
最高峰は標高2034mの王ヶ頭(おうがとう)で、山頂は平坦で王ヶ頭ホテルの他に電波塔が立ち並んでいます。そこから西側に標高2008mの王ヶ鼻(おうがはな)という尾根の突端部に張り出した部分があります。東側からの車での美ヶ原へのアプローチは国道142号➤県道178号➤美ヶ原長和町営駐車場(山本小屋ふるさと館前)になります。駐車場から少し歩けば見渡す限りの大雪原が広がります。美しの塔を過ぎてから少しすると登りになりますが危ない箇所や稜線はありません。コースが広く他の登山客とのすれ違いに気を使うこともなくスノーシューの練習に適していると思います。なお、王ヶ頭~王ヶ鼻は多少のアップダウンがあります。八ヶ岳連峰、富士山、南アルプス、中央アルプス、北アルプス、上信越の山々、浅間山等が見渡せます
筆者の「【雪山山行記】美ヶ原編」は以下をご覧ください。
初めてアイゼン・ピッケルを装備する人 へのおススメ雪山
北横岳 (きたよこだけ)
本来の名称は横岳(よこだけ)ですが、南八ヶ岳連峰の中に同名の「横岳」があるために、この北八ヶ岳の横岳は「北横岳」と言われます。山頂は標高が2471.6mの南峰と2480mの北峰で、北八ヶ岳ロープウェイで標高約2200mの坪庭まで行けるため、坪庭から山頂までが実質の登山になります。山頂付近で森林限界を超えるまでほとんどが樹林帯の中を登っていくコースで、コース幅はやや狭いためスノーシューよりは坪庭からアイゼン装着で登山開始することが無難です。山頂直下の傾斜は上り下りにアイゼンの効果が十分に発揮されるレベルですが、残りの部分は全体的に傾斜が緩く整備されていて歩きやすい初心者向きのルートです。北八ヶ岳ロープウェイ駐車場、乗り場建物ともに整備されておりトイレや更衣室、レストランに売店と素晴らしいリゾート設備が整っています。
筆者の「【雪山山行記】北横岳編」は以下をご覧ください。
黒斑山 (くろふやま) (黒斑山~蛇骨岳)
浅間山の第一外輪山の最高峰(標高2404m)が黒斑山です。まさに浅間山を眺めるための山と言っても良いと思います。チェリーパークライン(道路)を車で走行し一気に標高を1973mまで上げた後からの登山になります。車坂峠から黒斑山山頂への登山道はよく整備されており歩きやすくなっています。冬期登山ルートは多くの登山者が通ることで掘れている箇所もあり、また幅の狭い箇所もあるためスノーシューよりは登山口からアイゼン装着で登山開始することが無難です。登山口から「槍が鞘」までが樹林帯ですが、そこから「トーミの頭」にかけて眺めが開けて、斜度が少し急になります。そして「トーミの頭」から黒斑山山頂、蛇骨岳山頂(2366m)まではアップダウンの少ないコースです。登山口から山頂までの所要時間が短く、天気が良くて日没前に帰ってくることが可能ならば、午後一番からの登山開始でも十分楽しむことができます。車坂峠には高峰高原ホテルや高峰高原ビジターセンターがあり、食事処やトイレの使用が可能です。駐車場は上記ビジターセンター横かチェリーパークラインに点在する駐車スペースを利用することになります。
筆者の「【雪山山行記】黒斑山編」は以下をご覧ください。
慣れてきて本格的な樹氷も見たくなった人 へのおススメ雪山
西吾妻山 (にしあずまやま) (梵天岩~西吾妻山~西大巓)
山形県米沢市と福島県の境界に位置する山で、吾妻連峰の中の一つであり山頂の標高は2035mで、連峰最高になっています。冬期は樹氷が見られることが有名で、蔵王の樹氷に比べ小柄なものが多くみられ、蔵王の樹氷が「スノーモンスター」と言われるなら、西吾妻山のそれは「リトルモンスター」と言われています。福島県の裏磐梯グランデコスノーリゾートからゴンドラに乗り、ゴンドラ終点から西大巓(にしだいてん)へのハイクアップ、さらにいったん下ってさらに登り返して西吾妻山山頂へのアプローチや、山形県米沢からの天元台スキー場、リフト終点から梵天岩、西吾妻山、西大巓(にしだいてん)へのハイクアップというアプローチがあります。梵天岩~西吾妻山の区間の樹氷が最も多く見られる印象です。雪原が多くを占めコースは広く傾斜は緩いことと、稜線はありませんので他の登山者とのすれ違いに気を使うことなく全行程を通してスノーシューで歩くことができます。グランデコスノーリゾートの駐車場や天元台ロープウエイ湯元駅駐車場どちらもロープウェイ駅建物内のトイレが利用可能です。
筆者の「【雪山山行記】西吾妻山編」は以下をご覧ください。
蔵王連峰 (ざおうれんぽう) (地蔵山~熊野岳~刈田岳)
宮城県と山形県の両県南部の県境に位置する連峰で、最高峰は標高1841mの熊野岳です。蔵王ロープウェイの蔵王山麓駅からロープウェイで山頂駅に降り立てばそこがすでに樹氷高原です。まさに「スノーモンスター」を間近で眺めることができます。そこから簡単なハイクアップで地蔵山山頂を通過し蔵王連峰の最高峰である熊野岳山頂~お釜を左手に眺めながら刈田岳山頂までのコースで、帰りは行きの行程を往復です。このオーソドックスなコースの他に、蔵王ライザワールドのリフト終点から刈田岳に登るコースもありそこでも多くの樹氷を眺めることが可能です。ただ蔵王ライザワールドのリフトは上り専用使用で下りは使用できない点に注意が必要です。蔵王ロープウェイ蔵王山麓駅の駐車場や建物はよく整備されていてトイレの使用も可能です。蔵王地蔵山山頂駅にはレストランや展望台、トイレがあります。雪原が多くを占め、傾斜が緩いこと、コースが広いことと稜線がないことから、他の登山者とのすれ違いに気をつかうことなく全行程を通してスノーシューで歩くことができます。しかし、お釜を見たいがために淵に近づきすぎるということがないように注意が必要です。また樹氷の根元のツリーホールにも注意しましょう。
筆者の「【雪山山行記】蔵王連峰編」は以下をご覧ください。
慣れてきて長い距離・縦走や短いながらも急斜面も楽しみたい人 へのおススメ雪山
四阿山 (あずまやさん)
長野県と群馬県の県境に位置する山で標高は2354mです。浅間山の北西に位置します。どこから見ても山の形が屋根の棟(屋根が交差して山型に稜線になった部分)に似ているためにこの名前が付けられたと言われます。最寄りの町は長野県上田市や長野市で、菅平高原がさらに北側に隣接しています。四阿山登山口駐車場には冬期はトイレはなく、付近のコンビニは比較的遠い(上田市内、真田町、菅平高原)ためトイレや買い物を現地到着前に済ませておくことが必要です。序盤は広大な(夏期は牧草地)雪原の登りですが、コースは上部になるにつれてやや狭くなっていきます。最後の傾斜がやや急で幅が狭いため注意が必要ですが、全行程を通してスノーシューで歩くことができます。山頂からの最初の下りはアイゼンの方が無難かもしれません。山頂は360度開けた展望を楽しむことができ、南方には浅間山、西方には南アルプス、中央アルプス、北アルプス、北西方向には高妻山、妙高山、北方には横手山、北東方向には至仏山、草津白根山等を眺めることができます。
筆者の「【雪山山行記】四阿山編」は以下をご覧ください。
会津駒ケ岳 (あいづこまがたけ)
福島県の桧枝岐村にある標高2133mの山です。尾瀬国立公園の一部として指定されています。登山中からすでに尾瀬の名峰である燧ヶ岳や至仏山が間近に見えるだけでなく、頂上からは平ヶ岳、中ノ岳、越後駒ケ岳、丸山岳、会津朝日岳、谷川岳方面の山々を眺めることができます。頂上付近とその稜線は夏期は草(湿)原で冬期は広大な雪原の斜面となります。会津駒ケ岳山頂から北北西の方向に中門岳山頂がありそこまで足をのばすのも眺めが良いコースです。登山口から階段を上ると急登が始まりますが、そこで体力を持っていかれないように後半にも体力を温存しながらひたすら登りつづける感じになります。序盤の尾根登りを過ぎればコースは広く雪原のようになっていきます。雪の状態次第ですが、全行程を通してアイゼンを最初から装着が無難と思います。冬期は登山口直下の駐車場は車でアプローチ不可ですので、近隣の指定された駐車場(村営グランド駐車場)を利用することになります。冬期は登山口のトイレが利用不可のことがあり、近隣にある道の駅(尾瀬桧枝岐)のトイレが常時利用可能です。
筆者の「【雪山山行記】会津駒ケ岳編」は以下をご覧ください。
月山 (がっさん) (湯殿山~姥ヶ岳~月山縦走周回)
山形県の中央部にある標高1984mの山です。湯殿山(ゆどのさん、標高1500m)、羽黒山(はぐろさん、418m)とともに出羽三山の一つに数えられ、修験者の山岳信仰の山になります。冬期は志津駐車場まで車が通行可能ですのでそこに駐車し、積雪期限定の上記縦走周回コースを楽しむことができます。湯殿山までの登りは序盤森林帯ですが、それを抜けると見渡す限り雪原レベルの斜面のハイクアップになります。以降には木々はありません。湯殿山からいったん下り、姥ヶ岳(うばがたけ、標高1670m)山頂への登り返しも一面雪の斜面の登りになります。さらに姥ヶ岳から月山山頂への登り返しもコースというよりは一面雪の斜面を登っていくことになります。3山の縦走そして周回で下山して帰ってくることができるため雪山の魅力たっぷりの筆者のお気に入りの雪山です。志津駐車場は十分な広さがあり駐車しやすいですが、近隣にトイレはありません。そのため、山形道を利用の場合は月山湖PAでトイレを済ますか、物品の購入等は西川町のセブンイレブンに立ち寄る等の検討が必要です。全行程を通してスノーシューで歩くことができますが、距離が長くなりますので、アイゼンのほうが少しでも軽快に歩くことでき無難かもしれません。
筆者の「【雪山山行記】月山編」は以下をご覧ください。
燧ヶ岳 (ひうちがたけ)
福島県桧枝岐村にある標高2356mの山で、北海道を含む東北地方以北の最高峰になります。燧ヶ岳の南側の山麓には尾瀬沼があり、至仏山(しぶつさん)とともに尾瀬を代表する山です。山頂へは色々なアプローチがありますが雪山登山としてオーソドックスなのは北側の御池(みいけ)から俎嵓(まないたぐら、標高2346m)に登るルートです。このルートでは広沢田代、熊沢田代という夏期は広大な湿原が冬期には広大な雪原になっており、そこを歩いて通過するという醍醐味があります。俎嵓からいったん下って柴安嵓(しばやすぐら、標高2356m)への登り返しが結構な斜度になりますので、アイゼンはもちろんのことピッケル必携になります。なお、その区間の下りはクライムダウンがおススメです。全行程を通してアイゼンを最初からの装着が無難です。なお、尾瀬エリアの一番のポイントは各駐車場へアプローチできる国道の冬期通行止めがいつ解除されるかです。例年、桧枝岐~御池間の解除が4月末になることが多く、その後からの登山になります。また、御池駐車場の建物内のトイレが使用可能です。山頂からは尾瀬全体はもちろん、360度の眺めが堪能でき、間近に至仏山、武尊山、平ヶ岳、会津駒ケ岳、他には谷川岳、朝日岳白毛門、妙高山、火打山、巻機山、中ノ岳、越後駒ケ岳、荒沢岳、守門岳、丸山岳、女峰山、男体山、日光白根山を眺めることができます。
筆者の「【雪山山行記】燧ケ岳編」は以下をご覧ください。
最後に
いかがでしたか?筆者好みの雪山の中で「初心者にもおすすめ」で「気軽に景色を楽しめ」て「日帰り」の雪山を今回紹介しました。ロングトレイル好きな筆者の好みで選んでいますので、今回挙げたものは雪原歩きの割合が多く、岩稜帯がほとんどないコースです。そして個人的には厳冬期よりも残雪期登山が好みです。夏期の登山以上に、複数の天気予報と天気図の把握、風の強さをチェックしながら、体調良好での山行が厳冬期・残雪期の登山では大事です。そこをクリアすれば夏期には見ることのできない素晴らしい自然の風景の中に身を置くことができます。筆者自身、現地で暴風雪・ホワイトアウトによる途中撤退だけでなく、仕事後の徹夜の運転で体調が優れないまま登ったことで登山途中に具合が悪くなり途中撤退をしたことがあります。体調のためには前泊で現地入りすることが非常に有効ですが、直前まで天気が予測できないのが一番の問題です。一度で快晴登山となり上手くいけばそれに越したことはないですが、「一度でダメでもまた来たらいいや」ぐらいの気持ちで、常に無理しない心構えが大切だと思っています。今後それぞれの雪山山行記を随時UPしていきますのでお楽しみに。
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